九代目のひとりごと

18.クラシック・ソムリエ(!?)でもある私はラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンを ぜひ成功させなければいけない

おたふくわたブログやハニーファイバー株式会社のホームページにも何度も書いているので少々読み飽きている読者も多いかもしれないが、私のもとに昨年末、一本の電話が鳴り急遽、フランスへ行くこととなった。そして先日、1週間の旅から帰国した。

東京国際フォーラムがこの4月に「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 「熱狂の日」音楽祭2005」というイベントを行うのだが、これを記念して昨年12月に読売新聞にて「私とベートーヴェン」という作文コンテストをしていた。家内がこの広告を見つけたのがきっかけで、ダメもとで私が作文を書いたら奇跡的に最優秀賞を受賞してしまったのだ。「実は応募人数が3人ぐらいしかいなかったのではないですか?」と真顔で東京国際フォーラムの広報に聞いてしまったほど信じ難い受賞だった。この受賞は本場・フランスで行われているラ・フォル・ジュルネの体験取材が出来るという副賞がついていて、しかも「クラシック・ソムリエ」というネーミングまで頂いた。クラシックと私の出会いは以前、第九の件で少し書いているが…それにしたって私ではなく彼の事を本当に詳しく知る先輩方も他に多くいたに違いない。だが昨年は休みらしい休みも取っていないし、更に「おたふくわた」の宣伝にもなる。幸い会社も私の受賞に歓迎ムードだったしこの機を逃したら行けないと思った。

そんなわけでフランス行きは決まり、私はせっかくの機会だから、と家族を連れて行くことにした。家族といっても生後11ヶ月の息子を連れてだ。彼は1歳に満たないのに海外へ行かされるはめになった。息子は昨年、熱を出して入院したこともあるし、寒いフランスへ連れて行くことには不安が多かった。当然、賛成派もいたし反対派もいた。家族で何度もそのことについて話し合いもしたし、喧嘩もした。が、結果、私は母を含めた4人で家族旅行を兼ねた音楽祭の特派員としてフランスへ行くこととなった。

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さてこの音楽祭について簡単に書くとフランス北西部の港町ナントで、1995年に誕生したクラシック音楽祭である。毎年有名な作曲家をテーマにしてナント市内の会場で、朝から晩まで9つの会場で同時に45分間のコンサートが、5日間で約300公演も繰り広げられる。演奏者には若手や有名演奏家がいて、新しい聴衆の開拓の為、入場料は5~22EURO(700~3,000円)という驚きの低価格を実現しているのだ。 冒頭に述べた「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」とは同じようなスタイルを日本で今年の4月に行おうというものだ。

私は息子の面倒を家族で交代しながら初日から出来るだけ会場に足を運んだ。会場は熱気に包まれていて、おめかしした老夫婦、はしゃぎながら会場に入る子供達、革のジャンパーにGパンを履いているカップルなど、とにかく誰もが色々なスタイルで聴ける。色々なスタイルというのは服装だけに限ることではない。聴き方なども然りだ。例えば楽章の間に拍手しようが誰も怒らない(当然、私語などは怒られるが…)。エントランス付近では無料コンサートもあるしクラシックに関係した色々な出店もある。クラシックに興味がなくてもなぜか足を運びたくなるような不思議な空間であった。

家内がとあるフランス人の老夫婦と話しをしていて印象的だった台詞に「この音楽祭の素晴らしいところは1年に一回、親戚や友人と再会出来る事だよ」と言うのがあった。「そうか!この音楽祭にはそういう意味があるのか!」私は感動した。なるほど、居心地がよいわけだ!確かにレストランはあちこち満員だし、会場付近では大勢の家族らしき集団が歩いている。音楽を聴いて食事をして再会を喜び合う。なんという素晴らしい行事なのかと思った。家族で来たおかげでこの話に更に実感が沸いた。

日本からも多くの有名な演奏家が来ていたし、ジャーナリスト、マスコミなども大勢同行していた。出会いで言うならば現地の人々だけでなくこういった国内でもめったに知り合えないような沢山の人と名刺交換やメールアドレスの交換も出来た。ナント市長の朝食会に招待されたり家族を含めてのTV取材などもあった。息子に至っては地元の新聞の朝刊にまで載せていただいた(最年少の親善大使、といったところであろうか、ずいぶんと注目を浴びたのだ)。息子を連れてきたのはかなりの苦労だったが、苦労した分、この息子のお陰もあり貴重な体験が出来たのだから結果的には素晴らしい旅行だった。私のナント音楽祭体験記はこの話と重複するだろうが読売新聞にも登場する。

さて果たして日本でもこのイベントは成功するであろうか? いや、絶対にさせなければいけない。ナントで見た光景を少しでもこのギスギスした日本でも実現させたい。

最近は物騒な事件が多く「他人を見たら泥棒と思え」といわんばかりの雰囲気になりつつあるが、昔長屋風にご近所さんが誘い合い、子供や大人がパンフレットを見ながら会場の中を走り回るような楽しいイベントにしたい。そして何よりクラシックに興味がなかった人たちが満足して帰るイベントにしたいものだ。

おたふくわたを更に広めるのと同じぐらい重要な任務を持つことになった。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2005年1月に執筆されたものです

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