おたふくわた復活プロジェクト

4.デパートの店員さんとの会話・・・・・「ふとん売り場にて」

昨年(※2000年)の初夏に私はハニーファイバー株式会社に入りました。単純に綿に興味を持ったと言っても何から始めて良いか分からず、まずは社員の人たちに綿の良さを聞いたり寝具の現状を聞くことから始めました。また、寝具業界で有名な「寝装リビングタイムス」の新聞を再購読することに決めました。その後この新聞の発行元である株式会社日本寝装新聞社の記者と知り合い(この方には今でも本当にお世話になっています)数多くのアドバイスを頂きました。「現状を見に行くという意味では最初にデパートに行かれては」とまずはアドバイスされそれまであまり足を運ばなかったデパートの寝具コーナーに行ってみました。都内では売り場面積が相当広い部類に入る新宿駅の近くにある某有名デパートに向かいました。現場を最初に見た私の第一印象は・・・「羽毛、羽毛、羽毛」でした。

とにかく羽毛をメインにしかも大量に置いてありました。有名ブランドの寝具も羽毛だらけでした。カバーリングは目新しいものはありませんでしたが(花柄が中心)とにかく蒲団=羽毛と思わせるような光景にしばし呆然となってしまいました。よく見ると「羊毛敷き蒲団」「ウレタンフォーム蒲団」「温熱蒲団」が小さく置いてあり隅っこには「真綿の掛け蒲団」が置いてありました。しかし・・・木綿がないのです。そこで愛想が良さそうな主婦タイプの店員さんに「あの~木綿の蒲団はないのですか」と聞きました。するとその店員さんは私のことを不思議そうに眺め「敷き蒲団ならありますけど1種類しかありませんよ」と言って案内してくれました。奥のほうに隠れていた無地の側生地の固わた敷き蒲団でした。

皆さんも試してみてください。デパートの店員さんに「木綿蒲団ありますか」と聞くとほとんどの店員さんは不思議そうな顔をします。更にこの店員さんに「掛け蒲団を探してます」と聞くと更に不思議そうな顔になり「木綿はもう無いんですよ」と言い出したのです。私が「えっ?」と言うとその店員さんは「木綿は重いんですよ。体に悪いって言われてるんです。それに最近マンションなどでも外観を損なうとかで日干しが禁止されているところも多いし、それに干すの面倒なんですよ。もう木綿はないんですよ。やってないんです。ご両親に買われるのですか」と言ってきました。私の世代で木綿を知るはずがないということでしょうか。この店員さんのセリフをまともに聞くと寝具業界が木綿を使った蒲団をやめたように聞こえます。私が「じゃあ掛け蒲団は何がいいのですか」と聞くと「羽毛ですよ。羽毛は軽いし、あと木綿と違って(比較するところがにくい!)干さなくていいんです!」と言いました。

確かに羽毛は軽くて肌さわりも良く、品質の高いものではかなり快適な眠りを誘うものです。しかし羽毛は日に干さなくていいのではなく日に干したら痛み易いのです。 動物繊維であり紫外線に当てると人間の髪の毛と同じでたんぱく質が分解されるので痛んでしまうのです。こういう説明の仕方もあるものだと変に感心してしまいました。 木綿の欠点ばかり話されていましたが確かに軽さなどは羽毛がダントツです。しかし木綿は今でも蒲団屋さんのご主人や職人さんがいて手作りで綿ふとんを作ったものや機械で作った蒲団があります。通信販売やインターネットでも売っています。先日、寝装リビングタイムスのアンケート結果では次に購入したい蒲団は1位が羽毛で68%でした。しかし木綿は6%とまだまだ木綿が好きな方もいるのです。あの日干ししたあとの香りがたまらないとかあのフィット感がたまらないという人は私の周りでもいます。まだまだ木綿人気は根強く続いているのです。

今、東京都の粗大ごみの第1位はダントツで「蒲団」です。打ち直しを知らない方が多くなったのと羽毛蒲団が多いのが現実です。綿は打ち直しや座布団にリサイクルできます。最近は羽毛でもこういったリサイクルは行われていますがようやく消費者にも少しづつ知られてきたという段階です。綿は個人の体型に合わせれば綿の量や質で軽く出来たり重く出来たりします。また日干しすることにより水分を放湿し植物繊維なので弾力が太陽の力によってもとに戻ります。赤ちゃんやアレルギー体質の方のデリケートな肌にも刺激するようなことはありません。ではなぜ売れなくなったのか。昔は綿の種類が少なかったので掛敷両方同じ品質の綿を 沢山入れて売っていたこと、時代に合わない画一的なデザイン、そして日干し出来ない環境や時間的余裕が無いことなどがあげられます。しかし最近ようやく綿も見直され始めました。また上に挙げた利点を知らない人も多いのが現実です。「打ち直し」という言葉さえ知らない人もいます。実はこのような綿の良さや歴史を地道に伝えている方は結構おられるのですがなかなか目立った活動が出来ていません。しかしその中でも有名な寝装専門店の経営者がいらっしゃいます。

次回は私がハニーファイバーに入ってから多大な影響を受けた名古屋の方をご紹介します。  

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2001年11月に執筆されたものです

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