九代目のひとりごと

30.僕が感動した「ヨシムラ的生き方」 ~涼しいところに行きたい理由から始まった北海道人生~

営業をしていると色々な場所へ出かける機会が多い。取引先との打合せはもちろん、パーティーや集会などでも魅力ある人と出会う。その中で最近のヒット作は「ヨシムラさん」との出会い。
ある取引先の社長宅で新年会が行われご招待を受けたのだが、入った瞬間ヨシムラさんに目がいった。派手とかじゃないのだが、不思議な存在だった。

顔は谷村新二系で黒いタートルネックを着ているのだがなぜか鬼の顔のバッジを胸につけていた。多分節分が近いからだろうけど、ユニークな人だ。靴下も「大衆食堂」と書いたものを履いていた。私は完全にヨシムラさんをマークした。

ヨシムラさんは北海道で生活しているのだが「北海道のどこにお住まいですか」と聞くと平然とした顔で「バスの中です」と返答してきた。

10年以上前にご夫婦で「東京は暑いから北海道に旅行でもいこう」と話し、それから毎年北海道に行くようになり、自然の美しさ、人との出会い、数々の感動 を味わい、後にここに住みたいと感じるようになった。そして北海道で知り合った多くの方からの協力を頂き、「空いている土地」を譲り受け「廃棄処分してあるバス」も知り合いからもらいそこに住むようになったという。

写真を見たが広大な緑の中にぽつんと緑色のバスらしい建物が2台写っていた。写 真は竣工から完成までの作業を撮っていて、最初はバスの中の椅子や木枠などを外す解体作業からはじめ、さらに2台のバスをつなげたり、土を深く掘り下水道 を作るなど、まさに住宅改築の工程のように作業が進んでいる様子が分かる。そして最後に屋根の部分を白く、側面は緑色の塗装で完成させた。
奥さんと2人で作業したらしい。「変わった主人を持つと大変よ」と奥さんは言っていたがその奥さんも笑顔で土を掘ったりバスの中を解体している姿が何枚も写っている。
「これが寝室、ほら窓が見えるでしょ?一番後ろの席のとこを改造したんですよ。ここから入る太陽が目覚まし時計なんですよ」確かにバスの後部座席の窓枠の面影がある。
「あっここは以前は運転席。上に棚があるでしょ。これはそのままにしてあるんですよ」
写真では台所になっていた・・・。

ヨシムラさんは別にお金に困ってない。ただ「都会に飽きちゃった」だけの理由で越したのだ。さらに電話もテレビもパソコンもないそうだ。身内や知人がヨシムラさんと連絡を取りたいときは電報で連絡しているらしい「デンワクダサイ」・・・。

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生活はレトロかもしれないがヨシムラさん自身を見ていると「NEW」な雰囲気を持っている。おいしそうにお酒を飲みながら「楽しいですよ。年とったせいでやっぱり冬は寒いんで、東京に戻ってきます」あっ冷暖房も当然付けてないんだ・・・。

私はなんだかうらやましいと思った。突然奥さんと北海道にいきバスの生活。ヨシムラさんから見たら私達の生活こそ異空間に見えてきているのかもしれない。

携帯?ネット?ファッション?株?ヨシムラさんには「SO WHAT!?」なのかもしれない。それでもこうして顔色も目もぎらぎらして、元気に生きている。

とうとうヨシムラさんの職業や住所を聞かなかった。でもまた会えるような気がする。

一度バスの中で泊まりたいものだ・・。

当然このコラム読んでないですよね・・。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2006年2月に執筆されたものです

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