九代目言聞録

26.田舎マニア~突然週末に息子と田舎に行く癖がついてきた~

突然家内に「田舎に行く!」
僕は運命で社長になってしまった。社長の器じゃない。全然器じゃない。しかもあまり頭がよろしくない。朝礼暮改の連発、思いつき症候群、猪突猛進、自己PR大好き、落ち着きがない・・・社員がうまくまとめてくれているから順調だがいやあ本当に僕は指導者タイプじゃないんだよなあ。どちらかというと適当に部下もいる、何か大事発生すれば上司に頼れちゃうような立場・・係長とかぐらいがちょうどいいんだろうと思う。しかしまあそうも言ってられない。とにかく明るくバイタリティあふれる毎日を過ごすようにして会社を盛り上げようとしている。会社ではやはり「明るさ」が1番必要だ。それが僕の唯一の取り柄。僕が毎日こうして活動的でいられるのは、週末や休日に気分転換をしているからではないかと思う。ある時は家にあるレコードを回してDJをしたり、オペラの練習と言いながら大声を出したり、家族でサイクリングに行ったり、ジョギングやトレーニングをしているのもそう、、その僕が気分転換で特にはまっているのが年に数回、突然息子を連れて田舎に行く癖がある。これが楽しみで仕方がないのだ。
この前も突然「蛍を見に行く」といって家内と娘を置いて息子2人で新潟の魚沼まで出かけた。実は数年前に魚沼の田舎体験ツアーに参加していたのだがそこで知り合った現地の農協のKさんと仲良くなり連絡して行くようになったのだ。土曜の朝に出発、午後に着きおいしい空気を吸って魚沼産のコシヒカリを沢山食べて民宿に泊まり朝は散歩したりして昼前に東京に戻るのだ。

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小さく白いのが蛍2、3匹見える

蛍は感動した!
その日の朝、4歳の息子に「蛍見にいくよ!準備して!」と言い彼は一瞬きょとんとするが僕と出かけることを喜んでくれて背中にリュックを背負いホイホイとついていくる。彼にしてみたらいつも僕と出かけるときは冒険のような気分なのだろう。そして現地に到着していつもお世話になるKさんの事務所に行き、挨拶を済ませ隣接している公民館の体育館で息子とかけっこやサッカーなどをした。そして外に出て大きな山を見せてしばらく散歩をした。デパートやマンション、ビルがそびえたち、人がごちゃごちゃ歩いている町の中で暮らす息子にとっては田畑の周りを歩くだけでも面白いのだ。
そして夕方には民宿に行き大浴場で遊び、コシヒカリのごはんをたらふく食べてKさんが車で迎えに来てくれた。蛍を見に行く場所まで連れて行ってくれたのだがこの日は屋台も出ていて沢山の人が見に来ていた。オスの蛍がメスの蛍を探すために飛び続けているのその姿、一生懸命お尻を光らせて飛んでいる。「東京で蛍見学会とかあるでしょ?多くの蛍を買ってきて放しているでしょ。あれは本来の姿じゃないよね。こういう田舎で飛んでいるこの数こそ自然の姿なのにねえ。東京から来た人であの光景を見慣れている人はえっ?これしか飛んでないのと言ってくるんだよね。」とKさんは言っていた。うん、確かに沢山飛んでいない。でもこれが自然でありその光点の少なさがより美しく貴重に感じる。縁日の屋台で買ったポップコーンを食べていたら「もっと人が少ないスペシャルスポット行きましょう」とKさんは言ってきた。

そして車で20分、そこは真っ暗な田んぼのど真ん中だった。降りた瞬間、足が止まった。田んぼにさっきのようにちらちらと蛍が飛んでいるではないか!蛍の数は少なくてもあちこちの田んぼに飛んでいる光景は幻想的な美しさだった。そしてKさんに教えてもらい蛍が案外簡単に手で取れることが分かった。人が全然いないから仕切りロープもないのですぐそばの蛍がつかめたのだ。息子も初めて蛍の正体を間近で見れたので興奮していた。光が飛んでいるんじゃないよ。虫のお尻が光らせて下の方で止まっているメスを探しているんだよと説明した。
Kさんに御礼を言って民宿に帰った。ベープがあるのに蚊が飛んでいる。東京だとあんんなに嫌な蚊の音だがここへ来るとその音も何か癒されてるような気になってしまう。
翌朝、息子と僕は朝食前に民宿のまん前にある川に行った。雨が降っていたので流れが少々速かったが息子と岸までいき川を見せた。そして釣堀にいる魚を見せ、餌お与えている姿や魚をさばいている姿などを見せた。朝食も沢山食べた。いやあ凄く田舎は好きだ。息子に音痴ながらも「夏は来ぬ」や「カラスなぜ鳴くの」などを歌うにはちょうどいい情景だ。歌を聴きながらそのシーンを直に見れる。東京じゃ無理だ。

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雨により川の流れが激しい。釣った魚の口に串を入れている

僕には田舎がない。先祖代々博多や飯塚の生まれではあるが祖父祖母がいない現在、行く場所がない。だから僕はここ数年間魚沼に行くようにしている。僕にとっては何となく田舎帰り疑似体験だと思う。Kさんは遠い親戚のような関係になってきた。今度Kさんの家にいくことにもなった。

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早朝の釣堀では水霧が出ていた。右奥が泊まった民宿

魚沼を出発し僕は小千谷市片貝町に寄った。「おたふくわた匠」の生地、片貝木綿でお世話になっている紺仁の十二代目・松井社長に会いに行ったのだ。6月初旬に東京でお会いしているからすぐの再会だが息子に生地の産地を見せたかったのだ。なかなかいい体験だった。そして社長におすすめの蕎麦屋を教えてもらい東京に戻ってきた。民宿は安いし移動費も安い。東京だったら夜のレストラン代でふっとんでしまう。
お盆休みにはそば作り体験をさせるつもりだ。そして秋には恒例の稲刈りだ。僕はこの稲刈を息子に体験させてなかったら彼はしばらく先まで毎日食べている白いごはんがどのようにして作られているか知らないまま食事をしていたはずだ。白いごはん一粒を育てるのにいかに大変かを教えればごはんを残したりはしない。
と親らしい事を書いているが米作りから何まで一番感銘を受けたのが実はこの僕なの
だが・・・・
次回は「小学校ブーム」について書きます。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2008年5月に執筆されたものです

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