おたふくわた復活プロジェクト

20.「羽毛ふとんは軽くて体にいいと思いますか?」 ~「武蔵屋」亀川秀男氏が教えてくれた意外な事実~(下)

それは10月9日~11日まで横浜国立大学で行われた「第十八回睡眠環境シンポジウム」2日目のパネルディスカッション「寝具寝装品に対する消費者の要望」で起きました。 ふとん屋さんのご主人やマスコミ関係の編集者、先日おたふクラブにも書かせていただいた板倉氏など7人のパネラーが参加し、2名の司会者がいました。

睡眠環境の他に熱エネルギーや体温調整、自律機能についてなど初日からシンポジウムはまさに中身の濃い内容だったのですが正直私は2日目のこの午後にして睡魔が襲いかけていました。ステージではそれぞれパネラーの自己紹介をしていたのですが、その時ある方のこの発言で一気に目が覚めました。 「私は吉祥寺でふとん屋をしているのですが、相変わらず羽毛に頼っているこの寝具業界に正直あきれております。羽毛が体にいいとか根拠のない宣伝をいつまで消費者に言っているのでしょうか。ふとん内の温度が熱くなる寝具は体に負担になるはずなのになぜ見直していかないのか不思議で仕方ない」と大声で話したのです。羽毛関係の団体の方が司会をしていたのですがみるみる顔が紅潮していったのは言うまでもありません。

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マイクで過激発言をした時の亀川氏(中央:マイクをもっている人物)です。
この時場内は騒然となっています。しかしこの発言を機に討論は大変盛り上がりました

しかし観客席はもとよりパネラーからも一部拍手が出ていたのも事実です。この雰囲気は「よく言ってくれた!」という感じでした。そしてパネルディスカッションはこの方の発言で大きな盛り上がりを見せはじめました。観客席にいた寝具店の関係者や一般出席者から次々と質問の手が挙がりました。「業界関係者はポーランド産とハンガリー産などの違いを消費者に説明できるのか?」「羽毛はあと数年で100%近い普及率になるのだが業界は次の策を考えているのか」などなど・・・この盛り上がりはシンポジウムの中でも一番だったと思います。そのため時間超過で途中で打ち切ってしまったことが残念で仕方ありませんでした。観客席からも消化不良のような雰囲気を感じ取りました。なぜならまだ何人も手を挙げたままだったからです・・。私はその発言をした方の紹介をパンフレットで見ました。吉祥寺で「武蔵屋」という名前でふとん屋さんを経営している亀川秀男氏という方でした。パンフレットにも羽毛に対して「冬は暖かく夏は涼しいという事実に反する販促を続けるべきではない」という文章が書いてありました。 私は直感で「もしかしたらこの方は木綿好き?」と思いシンポジウム終了後恐る恐る亀川氏に近づきました。私は「先ほどのお話驚きました。」といって名刺を渡しました。

自己紹介をすると亀川氏は驚いた顔で「おたふくわたさんがここにいるなんて嬉しいですなあ!。なつかしいです。そうですか綿の研究ですか? いやあ嬉しい嬉しい」と言ってくださいました。「亀川様はもしかして木綿を評価してくださっているのですか」と聞くと 「人間にとって木綿は自然からの最高の贈り物ですよ。下着とか洋服などは今でも木綿を一番使っている。なのに寝具業界はどうして無視していったのか。業界も反省していると思います。でも羽毛は軽くていい!と売ったから今更木綿に戻れないでしょ。」とおっしゃいました。 亀川氏は羽毛ふとんの良さもあると言いつつも木綿を衰退させていったこの流れが気にいらないということでした。亀川氏は「ぜひ、頑張ってくださいよ。私も木綿のよさをもう一度広めていきたいとは思いますが・・もうね・・なかなかね。ああいう席でしかいう機会がなかなかないので」と話していらっしゃいました。亀川氏のせりふと表情になにか寂しさを感じました。亀川氏はその後行われた懇親会の会場に向かう送迎バスが到着したので握手をして亀川氏と別れました。 私は後日亀川氏に電話をしました。そして吉祥寺の武蔵屋に足を運ぶことにしました。そこにはまた私を驚かせた出来事があったのです。 次回は亀川氏との出会いの後編を書きます。

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2002年12月に執筆されたものです

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