九代目言聞録

15.飯塚良いとこ!井筒屋良いとこ!~その2~~こんなにあったかい催事ははじめてだった~

九代目のトークショー??
 僕が飯塚へ打ち合わせに行くたびに、久保社長や久田GMは3月の催事に向けて着々と準備を進めていた。今回は何を提案してくるかと博多から飯塚へ向かう高速バスの中でいつもワクワクしていた。開催1ヶ月前にお邪魔したときはおたふくまんじゅうの試作品、チラシ、レイアウト図が出来上がっていた。特におたふくまんじゅうのおたふく顔の烙印は上手に出来ていた。
ところが僕がおたふくまんじゅうをにこにこしながら試食していると、久保社長が突然身を乗り出し、のどにまんじゅうが詰まりそうな提案をしてきた。「そうだ原田さん、ぜひあなたのトークショーをやりましょうよ。綿への思い、おたふくわたの思い、これをテーマにぜひ開催記念としてやりませんか」
 違う。絶対に違う。突然思いついたように社長は話しているが以前から久田GMと企んでいたに違いない。時期を見誤り早いうちから提案して僕が断ると困るのできっと今になって切り出したんだ。開催まで4週間しかないし印刷の入稿どうのこうので返事を急かせるつもりだったのだ。
 しかもトークショーは午前・午後2回やるという。カリスマなんとかじゃあるまいしお客が入らないんじゃないかと心配した。確かに人前で話すことは結構慣れているので気分的に悪くはないが、トークショーという舞台は始めてなので妙な感じがする。しかし久田GMは笑いながら 「大丈夫!世間にアピールすることが大事でしょう。きっとマスコミが来るからその時のために客が来なかったらサクラを用意しますよ(笑)」 と話した。しかし久田GMの顔には「客は来るよ!安心しろよ!」という表情だった。ここまで自信にあふれていると心底信頼して仕事が出来る。よっしゃ!やろうじゃないのトークショー。久保社長もなんだかニコニコしていた。
チラシの原稿、まんじゅうの試食、レイアウトの確認を済ませ・・あとは翌月の催事のみとなった。

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開催1日前・・ほぼ完成

3日間があたたかい空間に包まれていた。
博多での打ち合わせを終え、そのまま高速バスに乗り飯塚に到着。飯塚井筒屋の従業員入り口で手続きを済ませ催事の会場へむかった。ところが・・・すでに箱が全て開けられふとんの準備が進められていた!先に社員が行って準備をしていたのだがここまで出来ているとは思わなかった。しかし社員も僕に「実はここの皆さんが荷物が来た時点でダンボールを空けていたんです」と教えてくれた。「おっ!お疲れ」いつものさわやか体育教師口調で久田GMが来た。「昨日ね全部のマスコミに声かけておいたからね。明日沢山来るよ!」と話かけてきた。えっ?全部?なんだか分からないがもういい全て久田GMに任せている。
デザイナーの方があれやこれやと動いていた。僕が来たときはホーロー看板をぶらさげようとしていてくれた。ふとんの価格やうんちくなどもその場でパソコンで作ってPOPにしてくれた。小さい百貨店の強み・・・対応が早いし人間同士の距離が近いので誤情報も少ない。店員同士もまるで家族のように話している。この良い意味でのほのぼのさがお客にとっても居心地がいいのだろう。ほのぼのさがなくなれば天神などにある都会的な百貨店と同じでありそれらは飯塚には不要である。
ほぼ準備が整ったとき一人の新聞記者が来た。えっ?催事は明日だけど・・違う、前日だと知っていて取材に来たのだ。出し抜きを狙っているということか。へえ!おたふくわたの催事を大きくニュースにしてくれる。他紙に負けないよう先に来たというのが面白い。僕は飯塚の名物劇場である嘉穂劇場をイメージしたざぶとんを持って写真に収まった。翌日の朝刊に大き目の記事で出た。久田GMが「他紙が来ないねえ。昨日の記事が悔しかったんじゃない?でも新聞社は平等に声かけたからねえ。来たもん勝ちだね」新聞を持ちながら久田GMはそういった。

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いよいよ催事がはじまった

さていよいよ開店である!ちらほらお客が来た。嬉しいなあ・・・僕と社員は話しかけてみる。わが社に対して思い出があるというのがとても嬉しい。あるご婦人はホーロー看板の前でしばらくの間立っていた。僕が話かけると我に返ったように目を開き「看板が残っていたんですね。私の青春時代にねえこの看板があちこちの家に貼ってあってねえ・・・あの頃がよみがえってきたんですよ。おたふくさんの顔がこうしてここにあるなんて」ホーロー看板を掲げたのは正解だった。やっぱりおたふくわたの全盛期を知る人にとってはわが社はこのホーロー看板だと思う。
 そしておたふくまんじゅうも大好評で列も出来た。持ち帰る人もいればその場でお茶と一緒に召し上がる人もいる。おまんじゅうを食べながらおたふくわたを懐かしんでもらう。
腰掛けている人はみな柔和な顔をしてホーロー看板やパンフレットを眺めていた。奥から覗き込んでいた久田GMがずっと笑顔だった。イメージ通りの会場の雰囲気だったのだろう。
僕のトークショーは午前の部はありがたいことにサクラとは言っても差し支えないがほぼ親戚会と思うぐらい集まってくれたので一般の人もなんだなんだと興味津々で集まってくれた。午後の部は完全に一般の人だけだった。椅子が埋まってくれたのでひと安心である。トークショーの後はテレビやラジオの取材も受けた。

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ホーロー看板は好評だった
(目の前にあるのは
トークショーの案内板…)

3日間の催事は大成功だったといえるだろう。皆で協力して作り上げたのでこの成功はとても嬉しい、特に久保社長、久田GM、今回の催事を持ちかけてくれた、はとこの嶋田吉勝理事長の3人には心から感謝している。この方々の支えがなければこのような成功は絶対出来なかったのだ。
 「懐かしいだけじゃない新しさがある」・・僕が商談先への提案書などに良く使うキーワードだ。確かに今回の催事ではホーロー看板や手作りはんてん、ちゃんちゃんこなど懐かしさを思わせるものも展示していた。しかしおたふくわた~花~などの新作は木綿ふとんではめずらしい斬新な花柄のデザインだし、がばいざぶとんや坐禅ふとんなども昔にない商品である。今回来場頂いた方にはおたふくわたの新しい顔も見てもらえたに違いない。その証拠に新作のおたふくわた~花~が予想以上に一番売れた。
しかしこんなにあっかい催事は、これからも僕は体験することがないだろう。社員にとっても貴重な経験になったはずだ。さて来月もいつものように飯塚へ打ち合わせに出かける。久保社長、久田GMの新たな戦略を聞くのが楽しみだ・・・・
次回は「監督最高!」を書きます。お楽しみに!

九代目 原田浩太郎

※このコラムは2007年4月に執筆されたものです

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